総合格闘技選手のピークは何歳?

総合格闘技選手のピークは何歳?

ボクシングの世界では「37歳定年制度」があり、2023年になりやっとこの制度が撤廃された事で話題になりましたが、総合格闘技にはもともと定年制度はなく年齢を重ねても現役で活躍している選手が多い印象があります。

先日はRIZIN44で金原正徳選手がRIZINフェザー級の絶対王者クレベル・コイケ選手に勝利し、金原選手の試合時40歳という年齢にも注目が集まりました。

総合格闘技選手としてピークを迎えるのは大体何歳頃なのでしょうか?
今回は「ファイトスタイル×年齢」と「階級×年齢」という2つの角度から、総合格闘技と年齢の関係性について考察してみました。

なお今回はUFCの過去の試合(2318試合分)のデータを調査対象とします。

ファイトスタイルと年齢

打撃と年齢について仮説

個人的に若くして活躍するのは打撃系の選手、年齢を重ねても活躍できるのは寝技の選手、というイメージがあります。
打撃戦で重要となる動体視力は、一般的に20歳頃をピークに下がっていくことが多いと言われています。
またボクシングが定年制を取り入れていたことからもわかるように、打撃戦のダメージは蓄積し脳に深刻な影響を与えます。KOされればされるほどよりKOされやすくなることもあり、打撃において年齢は若い方が有利な気がします。

寝技と年齢について仮説

一方寝技についてはそこまで年齢の影響が強くないような気がします。

ブラジリアン柔術のプロの大会では以下の通り年齢でカテゴリ分けされています。

カテゴリ名年齢
アダルト18-29歳
マスター130-35歳
マスター236-40歳
マスター341-45歳
マスター446-50歳
マスター551-55歳
マスター656歳以上

56歳以上というカテゴリが存在するように、柔術は年齢を重ねても続けることができる競技であることがわかります。
反射神経や動体視力のような年齢に比例する要素よりも、技術や知識など年齢と共に上げていくことができる要素のウェイトの方が重いのかもしれません。
よって寝技においては年齢を重ねたほうがやや有利なのではないのでしょうか。

仮説をまとめると以下のようになります。

打撃
攻撃する場合:
・パワーに関しては年齢はあまり関係なさそう
・動体視力や反射神経は年齢と共に落ちる

被弾する場合:
・動体視力や反射神経が落ちると被弾しやすくなるので年齢を重ねると不利
・KOされた回数が多いほどKOされやすくなるので試合数が多いと不利

寝技
攻守ともに技術や知識量が武器になるため、競技歴が長い方が有利?

ファイトスタイル×年齢の関係を検証

まずはUFCの試合データを使用し、KO/TKOで勝利した選手の平均年齢と、一本勝ちした選手の平均年齢を比較してみました。
仮説通りだと、KO勝ちの方が一本勝ちより勝者の平均年齢が若いという結果がでるはずです。

検証結果は以下の通りとなりました。

フィニッシュ方法勝者平均年齢敗者平均年齢
KO/TKO勝ち31.9歳33歳
一本勝ち30.8歳32.4歳

なんと勝者については仮説と反対で、KO勝ちより一本勝ちのほうが勝者の平均年齢が約1歳低いことがわかりました。
敗者については、仮説通り0.6歳程度KO/TKO負けの方が平均年齢が高いことがわかりました。

KO勝ちより一本勝ちする選手の方が平均年齢が低いというのはとても意外でした。
なぜこのような結果になるのか理由を考えてみましたが、まったく思い浮かびません。
なにか理由が思い浮かぶ方は、ぜひお問い合わせやTwitterからご意見いただけると嬉しいです。

階級と年齢

階級によっても活躍する選手の年齢層が若干違っているような気がしたので、階級と選手の年齢についても分析していきます。
なんとなく重い階級の方が平均年齢が高いイメージがありますが、実際階級ごとに違いはあるのでしょうか?

階級×年齢の関係を検証

まずは男子の階級ごとの平均年齢をまとめました。

階級平均年齢
フライ級28.3歳
バンタム級28.8歳
フェザー級28.5歳
ライト級28.7歳
ウェルター級29.3歳
ミドル級30歳
ライトヘビー級30.7歳
ヘビー級31.1歳  

ほとんど完全に、階級が上がるごとに平均年齢が上がっていることがわかりました。
例外的にバンタム級だけ平均年齢が少し高いこともわかりました。
データ数が多いので誤差の範囲内かなとも思いますが、他の階級が異常に綺麗に並んでいるので何か理由がある気もします。。

続いて女子選手の平均年齢はこちら。

階級平均年齢
女子ストロー級28.9歳
女子フライ級29.2歳
女子バンタム級30歳
女子フェザー級30.7歳

こちらもすごく綺麗に階級と共に平均年齢が上がっていることがわかりました。

体重と年齢の相関

相関を確認するために、まずは年齢×体重の散布図を作ってみました。なおこの散布図は男女混合の図となります。

最後に相関係数(関係あるかどうかを表す数値)を算出してみると、

年齢×体重=0.517368

相関係数は、

0.7~1:かなり強い相関がある
0.4~0.7:やや相関あり
0.2~0.4:弱い相関あり
0~0.2:ほとんど相関なし

という基準があるので、「やや相関あり」ということが証明されました。

体重とファイトスタイルの関係

最後に、体重とファイトスタイル(フィニッシュ方法)の関係を確認します。

フィニッシュ方法勝者の平均体重
KO/TKO勝ち78.9キロ
一本勝ち71.2キロ

KO勝利した選手の平均体重は約79キロ、一本勝ちした選手の平均体重は約71キロと大きく差が出ました。
体重が重い=攻撃力が強い選手のほうがKO勝利する確率が高く、逆に一本勝ちにおいては体重によってそこまで差がないため、平均体重で比較するとこのような結果が出たのではないでしょうか。

結論 結局MMA選手のピークは何歳なのか?

これまでの内容をまとめると、ファイトスタイルや階級によってピークとなる年齢は違いそうです。

そして階級別に平均年齢に差があることもわかりました。

・フライ級:28.3歳
・バンタム級:28.8歳
・フェザー級:28.5歳
・ライト級:28.7歳
・ウェルター級:29.3歳
・ミドル級:30歳
・ライトヘビー級:30.7歳
・ヘビー級:31.1歳

そして各階級のチャンピオンの平均年齢は、その階級の平均年齢より2歳程度上になります。

UFCチャンピオンだけに絞った傾向分析はこちらをご覧ください!

試合に勝利した選手の平均年齢とチャンピオンの平均年齢が共にその階級の平均年齢より約2歳程度高いという事を踏まえると、一般的には各階級の平均年齢より2歳上の30〜33歳ぐらいがMMA選手としてピークの年齢と言えるのではないでしょうか。

MMAは他の格闘技と比べても覚える事が多く技術の習得に時間がかかる為、肉体的なピークと技術的なピークがちょうど重なるのがそれぐらいの時期になる選手が多いという事だと思うので、MMAを始めた年齢によってもピーク年齢は前後すると思われます。