RIZINのチケット&PPVの適正価格についての分析

RIZINのチケット&PPVの適正価格についての分析

2023年現在、RIZINのPPVは5000円弱、チケット代については最も安くて1万円程度が相場となっています。
価格設定について、巷では「高すぎる!」や「選手達にファイトマネーとして還元するためには妥当である」などさまざまな意見が見受けられます。

よく考えると格闘技のチケット代って誰がどんな基準で定められているのか気になってきたので、RIZINのチケットとPPVの価格についていろいろ調査分析してみました。

2015-2023年 チケット/PPVの価格の推移

まずはチケット代とPPV代について、RIZIN創設からRIZIN43(2023年6月時点)までの平均価格の推移をまとめました。(※1)

2020年を期に平均価格が上昇したことがわかります。
個人的にコロナ後(RIZIN30)から見始めた初心者なので、PPVが2000円だった時代があるということに驚きました。初期は現在のPPV代と同じ価格でチケットが購入できたようです。
ちなみに2023年は6月時点での平均値となっており、例年大晦日など大きな大会は料金が上がる傾向にあるため、2023年の数字はこれからもう少し上がることが予想されます。

チケット/PPVの金額と市民のお財布事情の関係

次にチケット/PPV代の推移と、物価/賃金の推移をグラフにまとめてみました。

物価とチケット代の関係

ピンクの折れ線が物価指数です。
※物価指数とは、日常生活で購入する商品やサービスの価格の変動を表した数値です。

物価指数とRIZINのチケット/PPVの価格は比例してるように見えます。
RIZINが特別非情な値上げをしたわけではなく、世の中の物価の上昇に合わせて価格を設定していると言えるかもしれません。

平均的な賃金とチケット代の関係

次に、平均的な賃金とチケット代の関係をみて見ましょう。オレンジの折れ線が実質賃金指数です。
※実質賃金指数とは、、実際の給料から物価変動の影響を差し引いた数字のことで、なんとなく、平均的にどれだけの生活ができてるか?的な、市民のお財布事情的な感覚を表す数値としてイメージしてもらえれば良いかもしれません。(※2)

実質賃金指数は、2019年から少しずつ下がっていることがわかりました。2023年分の数値はまだ出ていませんが、体感的にさらに下がってそうな気もします。
逆にチケット/PPVの金額は2020年からぐっと上がってるので、賃金とチケット代の関係は悪化しています。

高いという不満が出てくる理由について

まとめると、自由に使える金額は変わらないのに、チケット/PPVの金額も物価に伴って上がってるために、自由に使えるお金の中でチケット代が占める割合が高くなってしまった状況だと言えます。
ですが、RIZINのチケット/PPV代は、選手のファイトマネーやRIZIN関係者の給料に反映される=誰かの給料のベースになると考えると、それを値下げすることによって、実質賃金指数の悪化にわずかですが影響するとも言えます。
結論、これは物価が上がっても賃金に反映されない企業ひいては国の問題で、RIZINが物価の上昇に伴いチケット代を値上げしたのは仕方がないことだと言えると思います。

妥当な価格を調査してみたい

RIZINのチケット/PPVの価格が具体的にどう設定されているのかはわかりませんが、統計学的には商品等に妥当な金額を設定する方法が存在します。
具体的には、まず顧客にアンケート調査を行い以下の4項目に答えてもらいます。そしてその解答から以下のような形のグラフを作成します。

  • 高いと感じる価格
  • 安いと感じる価格
  • 高すぎて買わない価格
  • 安すぎて買わない金額

※なおもちろんそんなアンケートは行われていないため、この表内の数字は私がなんとなくで入れただけの架空の数字である旨、ご留意ください。

アンケートの結果から以下の4つの価格の目安を得ることができます。

  • 上限価格:高すぎて買わない価格と安いと感じる価格の交わる地点
  • 妥協価格:安いと感じる価格と高いと感じる価格が交わる地点
  • 最適価格:安すぎて買わない価格と高すぎて買わない価格が交わる地点
  • 下限価格:安すぎて買わない価格と高いと感じる価格が交わる地点


よく考えると商品など物体とは違ってイベントチケットの場合「安すぎて買わない価格」という概念が多分存在しないので、また少し話が違う気がしてきました。
さらに経費や投資的な視点や、ブランディング等その他もろもろ考慮すべき点があるかと思うので、仮にこのようなアンケートを取ったところでその結果通りの金額にすることは不可能であるかとは思いますが、消費者の感覚を可視化できるとは思うので、参考のために一度やってみても良いのかなと思いました。

最後に

利率を挙げるためにチケットを高い値段に設定しても、売れ残ってしまえば意味がないし、PPVもちょうどいい金額に設定すればより多くの人が購入して、より多く儲けられるはずだと思います。RIZINだけでなく格闘技界は今一度、価格について再検討してみてもいいかもしれません。

余談「チケット価格変動制」について

近年、日程や出場選手、対戦相手などの要因を加味して、AIを使って価格を決めるシステムが、近年スポーツ界で広まってるようです。(※3)
大会ごとに細かく価格を設定するだけではなく、席からの見え方や、通路からの距離によって、エリア単位ではなく1席ごとにそれぞれ違った価格をつけることも可能とのこと。ややこしそうではありますが、確かにその方が納得感ある気もします。

野球やサッカー等人気のスポーツではすでに一部でこのシステムが使われており、売り上げが上がったとのデータもあるようです。
PPVも、試合数とか出場選手の人気とかファン層等詳細データに合わせて金額変えてもいいのかもしれません。
でもちょっと露骨すぎて選手が不快に感じてしまう可能性もあるので、難しいところです。

そういえばここ最近はケージかリングかの差だけで価格設定についてはナンバーシリーズとそう変わらなくなってますが、よく考えたらランドマークやトリガーは本来価格の差別化をする役目も担っていたのかもしれません。

文献および注意点

※1 税抜税込の金額が混在

チケット等の価格について、税抜金額で表示している時代と税込金額で表示している時代が混在していたため、今回は見やすさを重視して混在した状態のまま計算してます。そのため実際の情報とは誤差が発生していますが、あくまで趣味なのでご容赦ください。
またPPVついてもプラットフォームによって金額が異なる場合、最安値で計算しています。

※2 実質賃金とは?

労働者が実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した指数。労働者が給与で購入できる物品やサービスの量を示しており、個人消費の動向にも影響します。
https://www.smd-am.co.jp/glossary/YST2813/
例えば給料が10%上がっても、物価も10%上がってたら実質賃金は変動なし。逆に給料が同じでも物価が10%下がれば、実質賃金は10%アップ。要するに貰った給料でどれだけの生活ができるかという指標です

※3 チケット変動制について
引用元:https://newswitch.jp/p/18096